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ツーバイフォー住宅は地震に強い【三次元振動実験】

日本ツーバイフォー建築協会では、実物大の3階建てツーバイフォー住宅の耐震実験を行っています。

» 【動画】ツーバイフォー住宅の振動台実験

写真は、2度にわたる加振後の実験建物です。転倒防止策を施していない家具は大きく移動したものの、外壁および室内に大きな損傷は見られませんでした。

この実験では、阪神・淡路大震災時に神戸海洋気象台で記録された地震波を、データに基づいて三次元的(横<X・Y>方向と縦<Z>方向の揺れ)に再現しました。神戸海洋気象台で記録された地動加速度※1である818gal※2(阪神・淡路大震災における最大地動加速度)で加振したこの実験で、3階建てツーバイフォー住宅はほとんど損傷もなく、優れた耐震性能を証明しました。また協会で策定した家具の転倒防止策の効果も検証できました。

※1 地動加速度は、地震の大きさの指標となるもので、地震による地表面での加速度を指す。
単位はgal(ガル)で表示
※2 gal(ガル)は、加速度の単位。1gal=1cm/sec2

3階建て振動実験を振り返って
~信州大学 五十田博准教授インタビュー~

 日本ツーバイフォー建築協会では、耐力壁の試験に始まり、これまでに実大建物による静的加力実験を3回実施し、ツーバイフォー工法の静的な耐震性についてはすでに確認されています。また、阪神淡路大震災をはじめ、各地で遭遇した地震の際にもツーバイフォー住宅は被害が少なく、その耐震性は実証されています。しかし、昨今、他工法による実大の振動実験がいろいろな形で行われているなかで、ツーバイフォーの動的な面での耐震性能を工学的に実証する必要性を感じ、2006年4月24日、3階建て実大建物による振動台実験を実施いたしました。

 実験およびデータ解析をご指導いただいた信州大学の五十田博准教授を、河合誠・日本ツーバイフォー建築協会技術部会長が訪ね、実験の意義、これからの課題などについてお話を伺いました。

地震被害調査を通じて、木造の性能向上を実感

河合 : 先生は地震の被害調査を多く実施されていますが、まず、その結果からどのような感想をおもちになったかを、お聞かせください。

五十田 : 私は、最近の住宅は強くなっているという印象をもっています。特に木造は、他構造と比べて遜色がないほど性能が向上してきていると思います。
 しかし、地震で壊れている建物があります。そしてそれらはほとんどが古い木造です。
というのも、建築基準法は被害が起こってからそれを補うために基準を変えてきており、木造の場合は、「こういう基準にしましょう」という規定を定める以前に建てられた建物もあり、なかには耐震性能が確保されていないものもあるからです。
 一方、ツーバイフォーは「これくらいの基準を設けましょう」という考え方が最初にあって、それに基づいて建てられたものばかりですから、当然、平均値が高いわけです。
 直近の能登半島の地震でいいますと、木造のなかで階高をかなり高くとっている建物があり、柱が折れてしまっているとか、そういう構造計画を誤っているものに被害が出ているものもありました。

3階建て振動台実験で動的にも高性能が実証された

河合 : 次に、昨年4月に当協会が行ったツーバイフォーの3階建て振動台実験の結果について、どのように評価されていますでしょうか。

五十田 : ツーバイフォー工法は、使用する構造用合板や石こうボードなどの構造材料についてJISやJASに規格が定められており、材料の性能があらかじめわかっています。また、それらを使った壁の単体試験や実大建物での静的加力試験を数多く行っているので、今回の振動実験では確実にこれくらいの性能があるだろうという予測が可能であったことと、それがほぼそのとおり確認できたことは評価できると思います。
 贅沢を言えば、さらに少し先の、倒壊限度までやりたいという気持ちはもっていますが。
たとえば変形性能についてですが、よく伝統工法には変形性能があり、ゆらゆらしていてもなかなか倒れないと言われますね。また、伝統工法は1本の柱が太くて見た目の安心感もあります。
 しかし、ツーバイフォーのような壁式工法は壁全体が鉛直荷重を支持するので鉛直力の支持能力が高く、倒壊しにくく、伝統工法よりもっと変形性能があるのではないかと私は個人的に思っています。それを検証してみたいですね。
 静的実験では、ある程度、力の配分を決めてやっているので同じように壊れていきますが、動的だと、どこか1箇所に弱いところができるとそこに地震力が集中して入っていくので、そこで思わぬ損傷が起こることがあります。
 今回の実験でも、2階部分に損傷が出て1階に入力が入らなくなり、どんどん2階の変形が進むというようなことがありましたけれども、これはやはり振動台実験をやってみないとわからないことでしたね。
 ただ、そこには地震波の特性が関係してきます。今回、実験の際に2階の損傷を起こした地震波は神戸海洋気象台のものでしたが、新潟中越地震のときの小千谷波でやったらどうなったかわからないですし、ほかの地震波でも同様です。地震波を変えればいろいろなことが起こってくるでしょう。
 

今後は具体的な説明材料として、倒壊限界の解明・検証を

河合 : 次に、これから解明しなければいけない点についてお聞かせください。

五十田 : 倒壊する限界がどこにあるか、たぶん変形角で5分の1ラジアンくらいだろうと推測していますが、これはツーバイフォー工法の特長として解明しておく必要があります。
 現在、倒壊については、阪神淡路大震災級の震度6強から7くらいの地震動に対しては、こういうふうに設計しておけば倒壊はしない、安全で、人命を損なうことはない、というのはわかっています。その次のステップとして「これぐらいの地震がきたときに、どれくらいの損傷が起こるのか。どれぐらい補修しなくてはいけないのか」という性能設計ができるように、もう少しデータを分析したり、研究を進める必要があると思います。

河合 : たしかに、そうですね。阪神淡路大震災にしろ、新潟中越地震にしろ、倒壊しないまでも、クロスにシワが入っていた場合に、クロスを貼り替えればいいのか、下地の石こうボードも調べる必要があるのかわかりませんし、石こうボードを貼り替えたとして、どの程度、耐震性が戻っているのかわかりませんね。

五十田 : 「ここをこうすると次も安全ですよ」ということを言わなければいけないですし、当然、その前段階として「これぐらいの地震動だったらこれくらいの被害が出る可能性がある」ということをきちっと伝えることが大事です。
 品確法の等級がありますけれども、これは地震動を何倍かにしているだけであって、どのくらいの地震がきたときにどの程度の被害が出るのかはわからない。
 やはり今後は、お施主さんと話をしていくなかで、医師が患者に対して行うインフォームドコンセントのように「こういう地震がきたときはこういう状況になります」ということを伝えられないといけませんね。
 ツーバイフォーも、ほかの構造もそうですが、いわゆる性能設計をやっていくためにいろいろ検討していかなければならないことが多いと思います。
 そういう意味では、免震というのはわかりやすいですね。「損傷がない」という説明ができているので。

河合 : それも、ある程度シミュレーションして設計するので「これぐらいの地震だったらここまで」「これを越すと、普通の耐震と変わらない」とか。

五十田 : そういうことをちゃんと伝えていますよね。今後は普通の耐震構造でもそこまで説明できるようにならないといけないと思います。

仕上げ材、金物の効果も今回の実験で検証

河合 : 実験で使用した材料について、何か特徴的な結果が得られたでしょうか。

五十田 : サイディングについては、これがあったがために損傷がかなり抑えられているといっても言いすぎではないほど、効果が出ていたと思います。
 ところが、ある程度変形が進むとサイディングが効かなくなってしまうので、設計上は見込まないことにしましょう、という考え方が一方にはあります。しかし、余力としてはかなりあるものだという意識をもっています。

河合 : 金物にどの程度の引張力が生じるか、についての測定結果はいかがでしたでしょうか。

五十田 : データだけを見ると、たぶん、そんなに大きな値にならないんですね。設計をしているのに比べて低めの値になることが多い。
 したがって、いまの規定で設計している分には間違いはないのではないかと感じています。

実際の建物は、等級1でも阪神淡路級の地震に耐えるはず

河合 : 今回、実験棟を等級3で設計しましたが、等級3にしておけば、阪神淡路大震災級の地震では倒壊には至らない、といえるでしょうか。

五十田 : 去年の11月頃に、「等級1でつくった建物は阪神淡路大震災級の地震には耐えられない」という報道がありました。しかし、あれは仕上げがまったくないような状態で余力が何もないわけで、それで等級1でもつかと言われると、やはりちょっと難しいかなという気がしています。
 ただし、実際の建物には、計算では考慮されていない余力とか、材料の安全率があり、それによって少し性能が向上するので、阪神級でももつと思います。

地震動に関しては、とにかく力で耐えることが重要

河合 : ところで、いま制振構造の話題がずいぶん新聞などに出ています。それについて先生のご意見をお聞かせください。

五十田 : 最近の報道では「制振構造は振動が抑制される」というような表現もされていますが、地震動という不確定な相手に対しては、それは難しいのではないかと思っています。
地震動に関してはよく入力がわからないので、とにかく力で耐えることが重要になってきます。

河合 : 制振構造は、鉄骨造にはきわめて導入しやすいけれど、たとえば木造やツーバイフォーなどには難しい、ということはありますか。

五十田 : 木造の場合は釘で接合したりボルトで接合したりというような要素が入ってくるので、そこで変形が出てしまい、結局、制振部材のほうには、本来考えている変形の半分ぐらいしか入らないということになってしまいがちです。したがって、制振効果があまり出てこないということになります。
 一方、鉄骨造は接合がしっかりできるので、制振部材に変形を与えることができますが、減衰だけで地震に抵抗するというのはかなり難しい話だと思います。
海洋型の地震に対しては、たしかに減衰で効果が見られます。しかし、直下型の地震に対しては、減衰とともに十分な剛性と耐力が必要なんです。

変形性能に優れるツーバイフォーはさまざまな展開が期待できる

河合 : 最後に、ツーバイフォーのこれからに対する期待といいますか、何かアドバイスをいただけますでしょうか。

五十田 : せっかく4階建てが建てられるようになり、2時間耐火の認定をとるという話もあるわけですから、もっと大規模な建物を建てられるように技術的な検討をしていくとよいと思います。
 それに関連して、2009年に、日本とアメリカの共同研究で、木造6階建ての振動台実験の話が持ち上がっています。
 いずれにしても、今後はもっといろいろなものが建てられるのだという夢をもっていただいて、いろいろ設計を進めてもらいたいと思います。たとえば、ラーメン構造や他の構造と組み合わせていけば設計の可能性が広がりますし……混構造、中層、まだまだいろいろな展開が考えられますね。
 先ほども申しあげましたが、限界耐力計算の安全限界は30分の1ラジアンとされていますが、私は、ツーバイフォーはこれ以上の変形性能をもっている可能性は十分あると思っています。
 とにかく、地震のときに応答値がどれぐらい出るかということは追えるのですが、どこまでいくとほんとうに倒れてしまうのかはわかっていないので、変形に関して動的なこともあらかじめ検証しておく必要があります。そういう実験をぜひやってみたいですね。

河合 : 今日は有意義なお話をありがとうございました。
 

●五十田 博(いそだ ひろし)先生
信州大学工学部社会開発工学科(建築コース)准教授。博士(工学)。主な研究内容は、木質構造に関する研究、新材料を用いた建築構造に関する研究、建物の健全性評価のためのヘルスモニタリングシステムに関する研究等。現在、地震における木造建物の被害の分析のほか、さまざまな実大振動台実験に携わられている。

実験の目的と結果の解析

ツーバイフォー住宅は、阪神・淡路大震災や新潟県中越地震において被害が極めて少なく、耐震性が高いことが知られています。日本ツーバイフォー建築協会による静的加力試験でも高い耐震性能が確かめられており、今回の三次元振動台による実大の住宅の動的な加振実験では、強い揺れに対する建物本体および内外装、家具等の動きを測定・記録し、なぜ大地震に強いのか、そのメカニズムを工学的に解明することを目的とされました。

今回の振動実験および結果の解析は、財団法人建材試験センターに委託し、同センターによる「木質構造物の振動試験研究会」の平成18年度事業のひとつとして実施されたものです。

「木質構造物の振動試験研究会」
財団法人建材試験センター・ 学識経験者・住宅関連企業で構成。

委員長:坂本 功(慶應義塾大学教授)

主 査:河合 直人(独立行政法人建築研究所 研究主幹)

実験概要

場  所 独立行政法人土木研究所
振動実験施設(三次元大型振動台)
日  時 平成18年4月24日(月)14時~15時
(但し、4月14日(金)~16日(日)に構造体のみの実験建物による
予備実験を実施)

試験機関 財団法人建材試験センター

実験建物概要

階  数 3階建て
最高高さ 9.86m
面  積 各階53m2(8P×8P モジュール910mm)
外部仕上 屋根/平形屋根用スレート
外壁/サイディング張り
内部仕上 内壁/石膏ボード張り
一部ビニールクロス仕上
実験建物平面図

予備実験の実施

3階建ての構造体のみで仕上げなしの状態での三次元振動実験も併せて実施しています。目的は、

  1. いろいろな地震波による影響を確認すること
  2. 耐力壁以外の壁(間仕切壁、腰壁等)の耐震効果を確認すること
  3. 耐力壁の端部金物に加わる力の測定

などです。専門家による実験結果の解析を待って、今後のより安全なツーバイフォー住宅の設計に役立てることとしています。
 
 
(社)日本ツーバイフォー建築協会会報誌「ツーバイフォー」のVol.168 2007年7月号からの転載記事です。
(2007年7月2日掲載)

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