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耐火木造による高齢者福祉施設 | ツーバイフォー工法による特別養護老人ホーム

ツーバイフォー工法(木造)による老人福祉施設は近年増加傾向にあります。
鉄骨やRC、在来工法でなく、なぜツーバイフォー工法が有利なのでしょうか。

» ツーバイフォー工法とは

ツーバイフォー工法による特別養護老人ホームの特徴

1.健全な経営

国家財政の厳しさから福祉への補助金も減額の傾向にあるなかで、高齢者福祉施設は「運営から経営へ」と舵取りをせまられ、安定した健全な経営が求められています。

1)建設コスト

ツーバイフォー工法は、

  • 規格化された部材の組み合わせで構成する工法のため合理的
  • コンクリートの養生期間が不要なことなどから工期が短い
  • 2階建てまでなら建物重量が軽いので地盤補強の必要が少ない
  • 工場生産によるパネル化が可能(合理化
  • 木質屋根トラス(軽量で高性能)の活用
  • 道路や敷地に余裕があれば、大型クレーンも利用可能

…などの理由から同規模のRC造より低コストで建設することが可能です。

写真1 ツーバイフォーの建築工程
 
 
2)ランニングコスト
ツーバイフォー工法はその構造上、断熱・気密性能が高いことから、これまでのRC造に比べ暖冷房費が大幅に改善されます。他にも給湯費、電気代などのランニングコストを抑えることができます。

RC造で一般的な屋上防水は定期的なメンテナンスが必要ですが、木造の勾配屋根であれば雨漏れのリスクは低減されます。また、補修も容易にできます。
 
 
老人保健施設の減価償却(木造・RC)3)減価償却
ツーバイフォーは木造ですから減価償却期間が17年と、鉄筋コンクリート造の37年より短く、資金回収期間が短くなります。

減価償却期間が短いと営業収支は少なくなりますが、同時に法人所得税も少なくなることから、繰越剰余金はツーバイフォーのほうが多くなります。

また、高齢者福祉施設等の公共建築物は60年程度の使用期間とされており、減価償却期間の短いツーバイフォーは長期的にみて、経営に貢献する工法といえます。

日本の高齢化社会のピークにあわせた老人ホーム経営を、有利な資産運用として活用できます。

2.優れた居住性

長年、住み慣れた住宅の延長として、居心地の良い空間をもった特別養護老人ホームが求められています。

木造床は転倒事故での骨折の割合が少ないと言われており、床の保温性により温もりが感じられます。

このことは、多くの施設関係者から体験談として語られ、介護に立ち働く職員の足腰の負担軽減にも役立っています。

1)居心地が良い

  • 木造っていうのは、家(自宅)からつながってる感じで、真っ先に「いいな!」と思ったんです。ここしかない!と家族で一大決心して、申し込みから半年待って入居することができました。(入居者)
  • 木造の施設だと、生活空間に家庭にいるような親近感が増し、入居者のADLが安定しています。(事業者)
  • 開所してまる1年。私がまず気づいたのは、家族の方々が面会に来られる回数が増え、滞在時間が長くなったということなんです。以前は面会に来なかった方々もお見えになるようになりました。つまり、家族と入居者、そして職員の間のコミュニケーションが以前にも増して密になったということです。これは間違いなく木のやさしい空気感による効用でしょう。RCの建物に比べ、木造の施設にはいい意味で生活感が満ちています。(施設長)

2)夏涼しく、冬暖かい

  • 夏は涼しく、冬は暖かく、エアコンに頼らなくていいんです。やっぱり木は落ち着きます。(介護者)
  • 認知高齢者が夜間に起きだして廊下で寝てしまうことを想定すると、冬場に冷えるコンクリートの上では致命傷になりかねませんが、木の温かさがあれば危険性を回避できます。(事業者)

3)安全

  • 実は木造の施設に入居してから、立てるようになってね!歩行器を使って。以前は具合がよくなったためしなんてなかったから、今とても希望をもてます。もう痛くないの!(入居者)
  • RC造の施設から木造の施設に移ってから、床等が柔らかいので腰痛も減り、立ち仕事をしていても足が疲れません。(介護者)
  • 鉄筋の建物ではみんなナースシューズを履き、パタパタと慌ただしく動き回ってきました。シューズを履いているのは、カタい床からの衝撃を和らげるのと、たとえばベッドのキャスターのストッパーの上げ下げとかを行う足を保護する必要があるからです。
    ところが、木造のこの施設では、床が柔らかく音も静かなせいで、職員みんなの動作がおだやかに、細やかになるという現象を生んでいます。せわしなくなくなった結果、足の動作もゆっくり確実となり、家庭用のスリッパも脱いでハダシになっているスタッフもいるくらいです(笑)。(介護者)


図2 高齢者施設の建築特性と『はきもの』の使用
高齢者施設の「はきもの」の使用実態(上野麻衣 大阪市立大学 居住環境学科 卒業論文 2008.3 より)
構造種別では、木造に「素足・くつした」が多く登場。

3.環境にやさしい

木材は再生可能で地球環境にやさしい材料、エコマテリアルです。その木材を使ったツーバイフォー建築もまた環境にやさしい建築物で、CO2削減効果が期待できます。

1)CO2削減
・地球温暖化を止めるためには、石油や石炭などの化石燃料の消費によるCO2の排出を減らすことが重要です。それに並ぶ有効な手段と言われているのが、「大気中のCO2を吸収して地球上に固定する」ことです。
「固定化」というのはちょっと耳慣れない言葉かも知れません。自然界でそれを行っているものの一つが、木を含めた植物です。光合成作用により、大気中のCO2を吸収し、それを炭素(C)の化合物に変えて樹体内に蓄積しています。これが「固定化」です。伐採されてもその固定状態は変わらず、燃やされたり廃棄されて腐ったりしない限り、再びCO2となって大気中に放出されることはありません。木は、増えすぎたCO2を積極的に減らす、優秀なエコマテリアルと言えるのです。

2)公共建築物等木材利用促進法
・2010年に「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」が施行され、高齢者福祉施設も木材の利用に努めることとされています。木材の利用促進により林業の再生や森林の適正な整備、地球温暖化の防止等に貢献することにつながります。

4.高い基本性能

ツーバイフォー工法の優れた特性は「面構造」が基本。高い基本性能に基づいた高
齢者福祉施設は多くの方から支持を得ています。

  1. デザイン : 基本は自由設計、プランもデザインも自由自在
  2. 耐震性 : 地震列島の日本に求められる安心・安全な工法 (» 2×4は地震に強い)
  3. 耐風性 : 巨大化する台風にも安心 (» 台風に強い理由)
  4. 耐火性 : 火災に安全な建物。 (» ファイヤーストップ構造)
  5. 耐久性 : 時を越えて住み継がれるツーバイフォーの建物
  6. 断熱・気密性 : 省冬暖かく、夏涼しい (» 断熱・気密に優れた2x4)
  7. 可変性 : 構造区画が明確な工法、増改築も容易
  8. 居住性 : 快適で住み心地の良い住宅

動画で見るツーバイフォー福祉施設

首都圏における大規模特別養護老人ホームの完成を踏まえ、ツーバイフォー工法による福祉施設の事例解説を中心とした説明用動画をご用意しました。(日本ツーバイフォー建築協会・作成)

46.4MB 4分51秒


56.1MB 5分13秒

建築事例(特別養護老人ホーム)

1.明治清流苑 | 大分県大分市

人・地域・環境・地球-すべてに“やさしさ”を追及した国内最大規模のツーバイフォーによる特別養護老人ホーム。

▲エントランスから丘の上にゆったりと佇む建物を見上げると、左右にのびるユニットが両手を広げているように見え、そのやさしい表情に心がやすらぐ


▲周りの自然環境に溶け込む外観全景。デザインのモチーフは地中海沿岸に建つヴィラ。土壁を思わせる外壁があたたかな雰囲気を醸し出す

特養施設の建築は、ツーバイフォー工法が耐火構造の認定を取得するまで木造では不可能であっただけに、またかつてない規模の建物ゆえに設計・施工には数々の未知との戦いがあったという。

しかし、その完成は、今後の木造建築物の可能性を拡げる端緒として、日本の建築界のみならずツーバイフォーの本場カナダでも注目を集めた。

さらに注目すべきは、“そのやさしさ”である。
木の建物はそこに暮らす高齢者はもちろんのこと、働く人たちにもやさしい。
資源として再利用が可能な木材を用いることは、地球環境にやさしい。
そして、地域交流の場を設け、災害時の防災拠点ともなるべく計画された苑は、周辺地域に対してもやさしい。

苑を運営する社会福祉法人永生会清流苑理事長はこう語る。

「人が住まう場所として一番よい環境は、と考えたとき、すべての面でやさしさのある木造・ツーバイフォーこそ理想だという結論に達しました」

大正ロマンが漂う各ユニットはひとつの家庭。
リビングダイニングで集い、個室でくつろぐ
ユニットは計5カ所(1階1、2階4)。家庭的な介護を目指し、それぞれのユニットはひとつの家のように独立性をもたせ、ユニットごとに和のテイストのテーマ色を設定。中には広い廊下の左右に専用トイレ付きの居室が10室。くつろぎや食事の場として中央に共有のリビングダイニングが、廊下の突き当たりに談笑コーナーがある。(写真はショートステイ用のユニットだが、内部のつくりは特養部分も同じ)。

▲各ユニットはひとつの家と想定。それぞれのユニットの出入り口には引き戸が設けられている。インテリアはどこかなつかしい大正期の和洋折衷住宅のイメージ ▲おしゃれな扉を開けるとトイレ。省スペース化と介護しやすさを図るため便器を斜めに配置 ▲居室も和のテイスト。外にはバルコニーが続き大きな開口部から風が吹き抜ける

▲居室の入口は車いすで楽に通れる幅を確保。内には専用の洗面コーナーとトイレがある ▲各ユニットの中央部には開放的なリビング・ダイニングが。キッチンも併設され、家庭的な雰囲気 ▲デイサービス用の食堂兼機能回復室。和室や専用の浴室・トイレも完備 ▲戸外でくつろげる回廊風のバルコニーはデイサービスの利用者にも好評

概 要
法人名 :社会福祉法人 永生会
所在地 :大分県大分市
施設定員:地階:地域交流スペース、歩行浴槽(温泉利用)、倉庫(災害用非常食等備蓄庫を兼ねる)
1階:ショートステイ用居室(13 室)、デイサービス用施設(最大 30 名収容)、 特養居室(7 室)、管理棟
2階:特養居室(4ユニット・各 10 室)
敷地面積: 6,931.84㎡
建築面積: 2,039.03㎡
延床面積: 4,469.23㎡
構造 :2階建て(RC地階) ツーバイフォー工法(耐火構造)
完成日 :2006 年 7 月 1 日
設計 :(有)吉高綜合設計コンサルタント
施工 :安藤建設(株)九州支店

2.りんどう麻溝 | 神奈川県相模原市

□ 計画の経緯
「特養老人ホームりんどう麻溝」は当初、鉄筋コンクリート造3階建てで計画が進められていましたが、収支計画においてよりコストパフォーマンスが高く、工期の短い計画が必要となり、耐火ツーバイフォー工法を検討することとなりました。

□ 耐火ツーバイフォー工法に決定した理由

  1. 計画地北側の住宅地へ配慮するため、住宅に近いデザインにしようと考えました。
  2. 地盤が地表下70cmに良好なローム層があり、耐火ツーバイフォーの2階建てであれば、建物重量が軽いので、杭地業なしでも建設可能となります。
  3. 敷地面積も十分で2階建でも設計要求事項を満足できました。
  4. ツーバイフォー工法の工期が早い(鉄筋コンクリート造の3/4程度)と予想されました。
  5. コスト的に、RC造よりツーバイフォー工法2階建が有利と判断しました。

□ 2階建ての施設としたことでの周辺環境への「親和性」
ツーバイフォー工法の2階建計画としたことにより、特に北側住宅地への日影等の影響を最小限に抑えることができるとともに、建物自体も、住宅の建築要素に近いため、住宅地に対して高い「親和性」のある施設とすることができました。

□ 木造公共建築物としての「木質表現」
木造施設として、「木材の素材感」を施設利用者の方に感じていただけるように配慮しました。「木」が直接目に触れ、その良さを実感出来るように、共用部の中心となる玄関ホールに「吹抜」を作り、その上部にツーバイフォーの構造用ランバー材を使用した「木製ルーバー」を設けました。「木製ルーバー」のおかげで光りも柔らかくなり、高齢者施設として「穏やかな空間」の演出となりました。

このデザインは、耐火構造であることとスプリンクラーの設置を前提条件として成り立っています。

運営概要
開設年月:2010年11月
法人名:社会福祉法人直源会
所在地:神奈川県相模原市
事業内容:特別養護老人ホーム120名
ショートステイ10名
建築概要
工期:2009年11月~2010年10月(12ヶ月)
設計:(株)DAN総合設計
施工:西武建設(株)
敷地面積:7,919.6㎡
延床面積:6,397.5㎡(1,935.2坪)・・・・法床面積
施工床面積:7,112.5㎡(2,151坪)
構造:枠組壁工法・耐火構造
規模:2階建て
基礎:ベタ基礎

3.かざみ鳥 | 香川県仲多度郡多度津町

かざみ鳥は、日本最大規模の耐火木造3階建て建築物です。

国土交通省の補助事業「木のまち整備促進事業」の採択を受けた、日本最大規模のツーバイフォー工法(耐火構造)による3階建て福祉施設です。

バルコニーが廻廊式になっていて入所者(高齢者)に心地良い環境を提供し、またユニット内で働く介護者(スタッフ)が見渡しやすいコンパクトプランになっています。


▲ユニット中央部の食堂

概 要
法人名 :社会福祉法人 善心会
所在地 :香川県仲多度郡多度津町
施設定員:1F~3F 各階2ユニット(20 名)
1F デイサービス (30 名)
敷地面積: 3,594.47㎡
建築面積: 1,593.51㎡
延床面積: 2,978.52㎡(3,591.52㎡バルコニー含む)
構造 :3階建て ツーバイフォー工法(耐火構造)
完成日 :2011 年 10 月 29 日
設計 :(有)吉高綜合設計コンサルタント
施工 :三井ホーム(株)

4.フラワーサーチ | 愛知県豊橋市


木の香り漂うホーム「フラワーサーチ」は2005年1月に建設されました。その後、医療を必要とする方々の人生をお預かりできる場所を創りたい、活き活きと健康で過ごして欲しい、との想いから、新たに「フラワーサーチラヴィアン」を同敷地内に建設(2010年2月)。採光の取口として天窓を多く採用した設計で明るく、中庭には芝生が美しく小鳥のさえずりも聞こえます。


▲開放的なデイサービス

概 要
法人名 :有限会社 スピリットネイチャー
所在地 :愛知県豊橋市
施設定員:ショートステイ(20 名)
グループホーム(18 名)
デイサービス (35 名)
有料老人ホーム(30 名)
敷地面積: 5,634.27㎡
建築面積: 2,908.74㎡
延床面積: 2,792.26㎡
構造 :平家建て ツーバイフォー工法(準耐火構造)
完成日 :2005 年 1 月(フラワーサーチ)/2010 年 2 月(ラヴィアン)
設計 :(株)ニコム
施工 :(株)東海ビルド(フラワーサーチ)/(株)杉本組(ラヴィアン)

2012年3月23日(社)日本ツーバイフォー建築協会作成「耐火木造による高齢者福祉施設説明資料」を元にした記事です

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