2x4四国支部

現存する日本最古のツーバイフォー住宅「旧木下家別邸」

神奈川県大磯町にある「旧木下家別邸」は、国登録有形文化財(建築物)として登録されています。

ツーバイフォー協会も現地調査を行い、ツーバイフォー工法で建てられた貴重な歴史的建物であることを確認済みでしたが、神奈川大学の内田青蔵教授から、国内に現存する最古のツーバイフォー工法による住宅であるとの所見をいただきましたので一部抜粋して紹介します。

旧木下家別邸

この建物について、『大磯のすまい』(大磯町教育委員会 平成4年)によれば、山口勝蔵が字坂田山付に土地を購入し、別荘を建てたのは明治末期から大正初期のことと思われるとある。また、大正2年に発行された『建築画報』6月号に写真が掲載されている建物が、この旧木下家別邸であると考えられる。これから、当初の施主が山口勝蔵、竣工年は明治末から大正初期、であることが推察できる。 
(その後、閉鎖登記簿より、大正元年木下建平氏が建てられたことが判明)

設計者は、この建物と極めて類似していた「小野邸」を手掛けていることから、アメリカ帰りの建築家・小笹三郎であったと推察される。

建物の特徴は、工法がアメリカ独自の工法であるツーバイフォー工法によることで、現存するツーバイフォー住宅としては、最も古いものといえる。この住宅が建てられた明治末から大正初期は、わが国の人々の日常生活にまで洋風化が浸透し、とりわけ都市中間層の人々の間では伝統的住宅から新しい洋風の住宅に切り替えようとする機運が高まり始めた時期であった。

また、こうした動きの中で、上流層の住宅がイギリス式であったのに対し、都市中間層の住宅は合理的な考えに基づくアメリカ住宅をモデルとし、大正期のバンガロー様式の流行、スパニッシュ様式の流行といった動きを生み出すことになる。とりわけ、わが国で最初に住宅実物展示を行った大正11(1922)年の平和記念東京博覧会の文化村では、バンガロー様式の住宅やツーバイフォー工法を採用した住宅が出現するなど、アメリカ住宅の強い影響を受けた作品が出品されていた。

この住宅は、まさにこうした新しい住宅を求めた時代の動きを見事に反映したものであり、わが国の住宅史研究の貴重な史料であるとともに、生活史・地域史を再考するためにも貴重な建築遺構といえる。

― 内田青蔵 神奈川大学教授の所見から抜粋 ―

(一社)日本ツーバイフォー建築協会会員会報誌「ツーバイフォー」のVol.190 2011年夏号からの転載記事です。
ただし、「旧山口邸」を「旧木下家別邸」と訂正、一部文章を追加しました。

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