徳島杉の平角人工乾燥材の収縮率
徳島杉の平角材(人工乾燥)を収縮率試験した結果をご紹介します。
※平角(ひらかく)とは、木材の製材規格で、挽き角類のうち長方形断面の物を指します。
以下、徳島県林業総合技術センターの資料です。
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断面の大きな製材を人工乾燥した場合、表層から乾燥が始まり徐々に内部の含水率が低下します。乾燥終期においても表層と内部の含水率傾斜は大きく、表層の含水率は十分低くなっています。
そのため、表層部の含水率低下によって形状が固定され、全体の寸法変化が抑制できれば、乾燥を早めに切り上げることができます。
今回、仕上がり含水率を高めることにより乾燥時間を短縮することが可能であるか、人工乾燥終了時の含水率の違いによる収縮率の変化によって検討しました。
試験の方法
試験体は徳島県産杉50年生から、木口寸法12cm×24cm、長さ4mの平角に製材したもの38本を用いました。それらの材のうち33本を、蒸気加熱式インターナルファン型人工乾燥機を用いて、乾球温度80℃、乾湿球温度差3~10℃で乾燥しました。人工乾燥後の材は、実験棟内で桟積みし、実際の住宅で使用されているのと近い状態で放置しました。
その間、乾燥終了後、2ヶ月後、6ヵ月後および26ヶ月後の時点で材の幅(長辺)と厚さ(短辺)を測定し、乾燥終了直後の寸法を基準に収縮率を算出しました。
材の含水率は、材の木口から50cmおよび350cmの部位から試験片を取り、それぞれ全乾法により含水率を求め、平均したものを用いました。この含水率から試験体の全乾重量を算出し、寸法測定時の重量により含水率を求めました。
人工乾燥後の仕上がり含水率
人工乾燥終了直後の仕上がり含水率の分布は、図1のとおりでした。
含水率25%~30%を中心として最低値は14・6%、最高値は57.9%とバラツキが大きく、予想より高めになっていました。
人工乾燥後の含水率の変化
人工乾燥後の時間の経過にともなう含水率の変化を図2に示します。
6ヶ月後では、含水率のバラツキが非常に小さくなり全体が25%以下に低下しています。
人工乾燥後の収縮率の変化
2ヶ月経過後では、ほとんど収縮は起きていません。26ヶ月後は含水率15~25%の範囲において、仕上がり含水率にほぼ比例して収縮率が増加しており、25%以上においてほぼ一定の増加を示しています。
収縮率の0.5%以下にとどめるには仕上がり含水率を15%以下にする必要があります。
2ヶ月経過後では収縮率が負の数値になっており、膨張していることを示しています。6ヵ月後、26ヵ月後の収縮率をみると幅方向の収縮率に比較して小さく、仕上がり含水率30%程度でも収縮率の増加は0.5%以内に収まっています。分布に一定の傾向が見られず、6ヵ月後と26ヵ月後で逆転しているものも見られます。
まとめ
人工乾燥後の徳島杉平角の収縮は、仕上がり含水率15%以下でなければ防止できず、したがって、仕上がり含水率を高くすることによる乾燥時間の短縮は期待できません。ただ、厚さ方向のみ寸法変化が問題となる場合は、仕上げ含水率を30%程度にしても影響が小さいことがわかりました。
徳島県立農林水産総合技術センター 森林林業研究所 技術情報カード No.10(2000年2月)より
※徳島県立農林水産総合技術センター 森林林業研究所の了解を得て掲載しています。