徳島杉の強度(後編)~品質管理の事例
1.機械等級区分の方法
徳島杉などを実際に使われるサイズの材で曲げ破壊試験をしたところ、次のことがわかりました。
- 徳島杉 実大材の曲げ強さは、以前に節のない小さな試験体のデータから推測されていたものよりも高い。また、一般的に杉の場合、節があっても曲げ強さはそれほど低くならない。ベイマツは節があると曲げ強さが低くなる。
- 曲げ試験の際、曲げヤング係数の高い材(たわみにくい材)は曲げ強さが大きい。
- 年輪幅は極端な場合を除いてあまり影響がない。
- 一般的に杉の強度はばらつきが大きい。
杉の場合、上記の理由から構造材としては目で見るだけの目視等級区分では強度を推定するための効果が低いことがわかっています。
そこで、たわみにくさの指標であるヤング係数から等級区分を行う方法が提唱されました。ヤング係数を測定するのに機械を使用するので機械等級区分と言います。この等級区分法は効果的であり、建設省も表1のような機械等級区分製材の許容応力度の通達を出しています。これは目視等級区分製材の許容応力度と比べて高い値となっています。
等級 | 長期応力に対する許容応力度 (単位:kg/cm2) |
短期応力に対する許容応力度 (単位:kg/cm2) |
||||
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圧縮 | 引張り | 曲げ | 圧縮 | 引張り | 曲げ | |
E 50 | 60 | 45 | 75 | 長期応力に対する 圧縮、引張りまたは曲げの それぞれの数値の2倍とする。 |
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E 70 | 75 | 55 | 95 | |||
E 90 | 90 | 70 | 115 | |||
E110 | 105 | 80 | 135 | |||
E130 | 120 | 90 | 155 | |||
E150 | 140 | 105 | 175 |
ヤング係数を測定する方法は、大きく分けて2種類あります。1つは、材におもりを載せて、たわみを測定する方法です。今回は振動を利用する方法を紹介します。
図1に縦振動法による動的ヤング係数の測定の概略図を示します。製材の木口をハンマーなどで打撃すると、たたく力に関係なく、その製材のヤング係数と密度と材長から音の高さ(周波数)が決まります。したがって、この音の高さ、重量、寸法を測定すれば、動的ヤング係数を計算することができます。
2.品質管理の事例
写真1は、県内の住宅メーカーが全木連認定機種のポータブルグレーディングマシンで動的ヤング係数を測定し、機械等級区分しているところです。
(徳島県国産材需要センターにて)
あらかじめ測定する材の寸法を入力しておけば、材を支持台の上に載せ、ハンマーで材の木口をたたくだけで動的ヤング係数と等級が表示されます。このときには1棟分の杉構造材をほぼすべてについて測定しましたが、住宅1棟分すべてを測定したのは徳島県内でもはじめての試みだと思われます。木材の品質管理の重要性が認識されつつあると言えるでしょう。
大部分がE70とE90の等級でした。等級区分をすることにより、梁のスパンが長いところにはたわみの少ないE90を使用するなど、材の使い分けをすることができるようになります。
さらに、県木連では機械メーカーと共同で、構造材の動的ヤング係数をより簡便に測定できる装置を開発しているところです。この装置の概略を図3に示します。
計量台にフォークリフトを用いて製材を載せ、オペレーターは運転席からリモコンスイッチにより装置を操作し、動的ヤング係数を計測することができます。測定結果と等級はラベルに印字されますので、ラベルを製材に貼り付けて強度性能の証明ができるようになります。さらに、データの記録を自動で行うことができ、出荷した材の記録も残すことができ、製材の品質管理の有効な手段となると考えられます。強度保証された徳島杉構造材が出荷されるようになることを期待しています。
徳島県立農林水産総合技術センター 森林林業研究所 技術情報カード No.9(2000年1月)より
※徳島県立農林水産総合技術センター 森林林業研究所の了解を得て掲載しています。